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Traditional medicine

伝統的なくすり

古くから伝わる処方

日本の歴史の揺りかごである奈良県では、古くからくすりの生産が行われてきました。奈良県に縁のある、伝統的なくすりについてご紹介します。

陀羅尼助

このくすりの創製は、行者・山伏の元祖ともいわれる、役小角(えんのおずぬ)またの呼び名を役の行者と伝えられています。役小角は、茅原の里(現在の御所市茅原)に生まれたといわれており、奈良県にゆかりの深い人物です。
陀羅尼助は、色々な症状に用いられる胃腸薬で、当時はキハダの皮を煎じ、それに大峰山で採れる薬草を混ぜて作っていたようです。下痢止めと整腸の両方の作用を兼ね備えた、優れたくすりでしたので、宗教的・神秘的な魅了が相まって、次第に広まりました。
ところで、陀羅尼助には、大峰山と高野山の2つのルーツがあるといわれています。すなわち、大峰山においては役小角、高野山においては弘法大師が始祖といわれています。その後、大峰山をルーツとする陀羅尼助は、吉野山や当麻寺においても作られるようになりました。どちらも役の行者のゆかりの地です。
当初陀羅尼助は、山伏たちの持薬・施薬として用いられたようですが、近世中期になって、売薬として市場に出回るようになりました。
現在でも、主に天川村洞川と吉野山において製造され、広く親しまれています。

豊心丹

西大寺の叡尊の創製(1242年)によると伝えられるくすりです。『金瘡秘伝』(1578年)によると、その処方は、人参、白壇、沈香、畢撥、樟脳、縮砂、丁字、木香、川キュウ、桔梗、麝香、無上茶、梹椰子、金箔、カツ香となっています。効能は、下痢、渋腹(しぶりばら)、風気、頭痛、二日酔い、心気の疲れ、吐血、下血、小児の疳の虫その他万病に効くとうたわれていましたが、現在ではほとんど生産されていません。

六神丸

奈良県と特に縁の深いくすりというわけではありませんが、現在の配置薬において、特徴的なくすりの一つです。
中国ではかなり古い歴史を持つといわれています。六神丸の名称は、中国の六つの神にあやかったものです。その六神とは、方角の神の四神(東の青竜、西の白虎、南の朱雀、北の玄武)に広陳(こうちん)、騰蛇(とうだ)の二神を加えたものです。
六神丸は、その名にちなんで、たいてい6つの生薬からなる気付け薬です。強心作用の強いセンソ(蛙からとった生薬)を中心に、各種の高貴薬といわれる希少価値の高い生薬(滋養強壮のものを中心として)が配合されています。センソ以外は、いくつかのバラエティーがあります。

代表的な処方には、以下のようなものがあります。
センソ(蟾酥)、ジャコウ(麝香)、ゴオウ(牛黄)、ユウタン(熊胆)、ニンジン(人参)、リュウノウ(竜脳)[シンジュ(真珠)、ジンコウ(沈香)、レイヨウカク(羚羊角)などと代わる場合もあります。]
ジャコウやユウタンのように、基源動物がワシントン条約によって保護されることになったものもあり、代用の生薬が用いられる場合もあります。
製剤は非常に小さな粒の丸剤で、多くの場合には金箔でコーティングされています。

奇応丸

小児用の五疳薬(子供が種々の病気で衰弱したり、呼吸が弱くなったり、神経症状が起きたりしたときに服用する薬)です。
樋屋家の奇応丸が有名ですが、これは、東大寺の鐘楼の太鼓の中に書かれていた薬方に基づき再現されたものといわれています。処方としては、六神丸からセンソを抜いた構成に似ています。

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